SCIENCE OF CLEANING

第6号

第2章 建材(素材)を見分ける ― 硬い素材の見分け方

天然石か人工石材か。磁器質か陶器質か。硬い素材は見た目が似ていても、弱点はまったく違います。模様・手ざわり・音といった現場で使える手がかりから、見分け方を確かめていきましょう。

舞台はとある商業ビルの控え室。佐藤ソウイチさんは45歳、清掃一筋20年のベテラン現場リーダー。腕は確かで後輩からの信頼も厚いが、本人いわく『ぜんぶ体で覚えた我流』。

今日は素材の科学に詳しいDr.ウッディと、『建材(素材)を見分ける』をテーマに談義を繰り広げている。

SECTION 02

天然石材と人工石材の違い

佐藤ソウイチさん
佐藤ソウイチさん

じゃあ先生、具体的な見分け方を教えてください。まずは石ですね。天然の石と人工の石は、パッと見じゃ区別がつかないことがあるんですが…

Dr.ウッディ
Dr.ウッディ

似ていますよね。でも性質は大きく違います。

見分けるポイントは、まず模様の不規則さ。天然石は模様や色ムラが不規則で、まったく同じ柄は二つとありません。人工のものは、模様が規則的に繰り返されていることが多いんです。

佐藤ソウイチさん

ああ、それは分かる気がします。天然石って、触るとひんやりしますよね。あれも手がかりになりますか?

Dr.ウッディ

なります。天然石は熱が伝わりやすく、室温は体温より低いので、触るとひんやり感じます。プラスチック系の人工石材は、同じ室温でもやや温かく感じるんです。それから、天然石タイル張りの場合は太い幅の目地があるのに対して、人工石材は継ぎ目が少ないのも判断材料です。

佐藤ソウイチさん

御影石はどうですか? あれは酸に強いって聞いたことがありますが。

Dr.ウッディ

御影石 ― いわゆる花崗岩は比較的酸に強いです。ただ、天然石なので産地によって差があります。「石だから全部同じ扱いでOK」という考え方は危険ですよ。

佐藤ソウイチさん

なるほど。じゃあ人工の石は丈夫かというと、そうでもない?

Dr.ウッディ

人工石材には人工石材の弱点があって、熱や摩耗に弱く、黄ばみや飲食物などのシミが生じやすいんです。どちらが強いという話ではなく、弱点が違うという話なんですね。

さて、石材の見分け方について、表にまとめてみましたよ。

石の素材の見分け方・特徴・弱点・清掃の注意をまとめた表。天然石・人工石材・セメントテラゾーの3種類について、見分け方と主な弱点、清掃時の注意をそれぞれ記載
喜ぶ佐藤ソウイチさん

おお! こんないいのがあるなんてありがたい。持って帰って、現場チームと共有しますわ。

TILES

人造石タイルの違い

佐藤ソウイチさん
佐藤ソウイチさん

石つながりでいうと、タイルもいろいろありますよね。人工石材ではなくて、人造石材っていうのもありますが、この2つは性質が違うんですか。

Dr.ウッディ
Dr.ウッディ

違いますね。たとえばセメントテラゾーは、大理石などの天然石材を砕いたものをセメントで固めているので、大理石と同じく酸に弱い。陶器質タイルは、ふつうは釉薬(うわぐすり)で表面を覆っていますが、釉薬が塗られていない部分は洗剤や水分を吸い込みやすくて、シミやカビの原因になります。

驚く佐藤ソウイチさん

吸い込むんですか。タイルってもっとカチッとしたものかと思ってました。

Dr.ウッディ

磁器質タイルなら吸水率が低くて比較的丈夫です。近年、コンビニやスーパーの床に、傷がつきにくいということで磁器質タイルの一種のセラミックタイルが広く使われるようになったのは、まさにその丈夫さゆえですね。

佐藤ソウイチさん

見分け方はどうしましょう? 張ってある状態だと、裏なんか見えませんよね。

Dr.ウッディ

おっしゃる通り、タイルの裏面や切断面の色・質感を見れば密度の違いがある程度分かるんですが、施工された状態では難しいですね。

叩いて音の差で確認できる場合があります。それと大事なのが、目地のセメントモルタルも吸水しやすいという前提に立つことです。

佐藤ソウイチさん

というと?

Dr.ウッディ

特に酸性洗剤でタイルを洗浄するときは、あらかじめ「水打ち」をして水を先に浸み込ませておき、洗剤をタイルの中まで浸み込ませないようにする方法が安全です。

喜ぶ佐藤ソウイチさん

水打ちにそんな意味があったんですか。俺は「ホコリを立てないため」くらいに思ってやってましたよ。理屈が分かると、心持ちが変わってきますね。

METALS

金属素材の違い

Dr.ウッディ
Dr.ウッディ

硬い素材ではもう一つ、金属も押さえておきましょう。ステンレス、アルミ、真鍮 ― それぞれ特徴と弱点が違います。

佐藤ソウイチさん
佐藤ソウイチさん

金属は色で見分けがつくから、そこは楽ですね。ステンレスは濃い灰色、アルミは淡い灰色、真鍮や銅は黄色っぽい。

Dr.ウッディ

そうですね、通常は色やデザインで容易に判別できます。

問題は扱いのほうで、ステンレスは比較的丈夫でサビにくいですが、強い酸やアルカリで腐食することがあります。

アルミは軽くて柔らかく、サビには強いけれど、アルカリで腐食しやすく傷つきやすい。

真鍮や銅は経年で色味が深まって抗菌性もある良い素材ですが、酸にもアルカリにも敏感で、傷つきやすいんです。

01

ステンレス

濃い灰色。丈夫でサビにくいものの、強い酸やアルカリで腐食することがあります。

02

アルミ

淡い灰色。軽くて柔らかくサビに強い一方、アルカリで腐食しやすく傷つきやすい。

03

真鍮・銅

黄色っぽい色。抗菌性がある良い素材ですが、酸にもアルカリにも敏感です。

佐藤ソウイチさん

アルミにアルカリはダメ、っていうのは経験で知ってました。白く粉を吹いたみたいになるんですよね。

Dr.ウッディ

それが腐食です。

それから一つ豆知識を。ステンレスには磁石がつくものがあるんですが、磁石がつくタイプは強い酸やアルカリで腐食することがあるので、特に気をつけてください。

笑顔の佐藤ソウイチさん

磁石ですか。ポケットに一個入れとくと役に立ちそうだな。

SECTION 02 / SUMMARY

第2節 まとめ

  • 天然石は模様の不規則さや冷たさで判別でき、多くは酸に弱い。
  • タイルは吸水率によって性質が異なり、迷ったら「吸水しやすい」前提で水打ちなどの対応をする。
  • 金属素材は見た目で見分けやすいが、酸やアルカリに弱いものが多い。